【スペイン蹴球戦術論II】スペインサッカーの戦術用語 オフェンス編②

Buenos Dias! Come estas? (おはようございます!みなさん、お元気でしょうか?)

本日もベルビュースポーツアカデミー/ベルビューフットボールクラブ府中(BFC府中)のホームページにご訪問頂き、ありがとうございます。

前回の続きで本日はオフェンス編第2弾について説明したいと思います。

スペインサッカーを語る上で、言語化とか、小学生から基本的な戦術を習得しているという話を聞きますが、私がこれまでプレイ・指導した日本・アメリカ・ブラジル・フィリピンと比べても、スペインでは小学生の早い段階から戦術的要素を入れたトレーニングをしていると感じています。いわゆるアナリティカルトレーニング(一方向のみの単純な反復練習)よりも、グローバルトレーニング(ゴールがあり、攻守両方向の要素を含んだ練習)やインテグラルトレーニング(フィジカル・テクニック・戦術的要素を含んだゲーム形式の練習)を重視しています。

日本のジュニア年代の場合、低学年までパスは禁止、ドリブルのみ、1対1をひたすら練習し、ひたすら個を磨くとか言われていますが、高学年になってからいきなり戦術トレーニングをしても、選手は戸惑うばかりか、上手くいかないことが多く、チーム全体としても停滞したり、行き詰まることが多いです。特にこの傾向は4-5年生位から現象として表れることが多いです。

私自身、選手時代の経験ですが、高校に入った時にいきなり全国レベルのチームに入りましたが、監督、コーチ、選手の言っていることが理解できませんでした。元から強いチーム、ライセンスを持っている指導者に巡り合えれば、サッカー脳があり、戦術もある程度理解していると思いますが、日本はまだまだ指導者が不足しているので、戦術的なトレーニングの機会は限られてしまうと思います。もちろんJリーグが出来た31年前に比べると飛躍的な進歩をして、レベルアップしていますが、トレーニングや試合までのサイクルの作り方、ピリオダイゼーションはまだまだ改善の余地があると思います。

今回は、攻撃編第2弾という事で基本的な戦術を3つ紹介したいと思います。

個人戦術・グループ戦術とは何か?

戦術と聞くと、最近では個人戦術・グループ戦術という言葉を聞く事が多いと思います。サッカー・フットサル両方でも言語化されて、日本でも広く普及されてきているのではないでしょうか。

しかしながら、監督・コーチの経験値、ライセンス取得・アップデートの有無によって、日本語で統一化された戦術用語はまだまだ確定していないと思います。

最近、岡田監督の岡田メソッド、レオザフットボールさんの蹴球学を読み、内容が非常に似通っておりますが、言語が統一されていないのが残念に思いました。自分の頭の中でそれらの用語を変換、意訳しながら、スペイン戦術との確認を頭の中でしていました。

実際のところ、スペインでは個人戦術・グループ戦術について、約30位の戦術名に言語化されて、定義されており、小学生からすでにそれらの戦術用語を使いながら、各トレーニングを体系化して、行っています。

そして、その上位に位置するものがゲームモデルだったり、戦略だったり、ピリオダイゼーションのサイクルだったりしますが、この辺りは岡田メソッド、蹴球学は非常に詳細に記載、説明されていましたので、私自身もアップデートするのに役立ちました。ぜひ、フットボールをアカデミックに勉強したい方は何度も読んでみることをお勧めします。

本日は、③アジュダスペルマネンテス(Ayudas Permanentes)、④コントラアタケ(Contraataques)、⑤カンビオ・デ・リトモ(Cambios de Ritmo)を紹介します。

Principios Ofensivos (オフェンス原則)③アジュダスペルマネンテス(Ayudas Permanentes)

簡単に言うと状況を打開するフォロー、サポートとなります。

特徴
■常にあらゆる状況のもとでボール保持者に与えられる選択肢(解決策)のこと。
■ポジション取りがとても重要。
■プレーの継続性を簡単にするためにボールを持っていない選手の機動性(モビリティ)が重要。

具体的な特徴・練習内容

これは非常に説明がしづらいので、下記の画像を掲載しておきます。

バルサの昔の映像ですが、センターバックやピボーテ(ボランチ)がポゼッションした際に、常に三角形を作ってサポートをしていると思います。

また、三角形ではなく、ワイドに開いて台形の形になったり、その先にも三角形をいくつも作ったりしているのがわかると思います。

ポゼッション時にこのようなボールのもらい方をアジュダスペルマネンテスと言います。このプレイ中には他の戦術も発動して、5レーンの理論もあり、バランスよく選手が配置されているのがわかると思います。

Principios Ofensivos (オフェンス原則)④コントラアタケ(Contraataques)

これはよく耳にする言葉かもしれません。日本でいうカウンターアタックの事です。

特徴

相手からボールを奪い、素早く相手のゴールに攻め込むこと。
①少ないタッチ数で、②相手が空けたフリースペースを利用、③切り替え時、守から攻のトランジション


【プロセス】
相手攻撃の無効化→ボール奪取→より適したレーン(コース)を前進しながら素早い攻撃を行う。

ここでもレーンというのは5レーンとかポジショナルプレイを考慮しています。

具体的な特徴・練習内容

ピッチを3分割(ディフェンディングサード、ミドルサード、アタッキングサード)して、ボールを奪う場所と奪った時の優先順を考えて行う。①相手の守備が整っている場合、レーンを変える。②守備が整っていない場合➡素早く同じレーンで行う。

【コントラアタケの練習方法】
■優位性がある状況での練習:2対1、2対2、3対2
■異なるゾーンでの練習
■守備組織に応じた判断を促すこと
■スピードのある練習を意識すること
■コーチはウオーミングアップからどうやって練習に取り入れていくかを考えること。

スペインサッカーと聞くと、バルサやスペイン代表のポゼッションサッカーをイメージする方が多いと思いますが、中位~下位チーム、2部・3部のチームはコントラアタケを基本戦術に置いて、ゲームに臨んでいることが多いです。特にバルサ・レアルなどの強豪とアウェイで戦う場合は、守備的な戦術からのコントラアタケによる得点奪取はもはや定石とも言えます。

守→攻、攻→守のトランジションの局面は日本のサッカー・フットサル両方の指導者ライセンス・講習でも非常に重要視されております。この考え方はグローバルスタンダードだと思います。

日本のジュニア年代でも堅い守備からのコントラアタケ(カウンター)を狙うチームもあると思います。その場合、3-3-1の1トップにはやはり走力・フィジカルのある選手を置いて、シンプルに勝負する事になると思います。これもスペインでは基本戦術の1つになります。スペインの場合、7人制なので、2-3-1か3-2-1のシステムの事が多いです。

Principios Ofensivos (オフェンス原則)⑤カンビオ・デ・リトモ(Cambios de Ritmo)

これは直訳するとリズム変化になります。

特徴

様々な動きによって特徴づけられる。
①マークを外す動き(フェイク)、ゆっくり走ったり、早く走ったり
②ボールのスピードと軌道
・個人とグループでの場合がある。

実際の動画を見てみましょう。

日本語や日本の指導者ライセンスでいうとビルドアップと言われたり、パススピードを変えたり、ゆっくりドリブルしながら、相手を食いつかせるという言い方になるかと思います。動画の49秒まではGKと後ろの2バック気味の3枚でゆっくりとボール回しながら、相手が来るのを伺っているのがわかると思います。相手が前が掛かりになってきたのを狙って、GKからピボーテに縦パスを入れて、そこから相手背後のラインを取りに行き、前に速い攻撃を仕掛けていきましたね。

この縦パスを入れる前の動きが⑤カンビオ・デ・リトモになります。

まとめ

本日は、スペイン基本戦術③アジュダスペルマネンテス、④コントラアタケ、⑤カンビオ・デ・リトモについての説明でした。いかがだったでしょうか。

日本でのオンライン講習やマドリッドでの研修では、ひたすらこのように用語の説明と実際のプレイを動画でチェック、その後にリーガエスパニョーラやセミプロリーグのトレーニングや試合を見て、上記の戦術の確認、獲得を目指していきました。

そして、最後は指導実践で戦術的要素をいれたグローバルトレーニングかインテグラルトレーニングを行い、レポート試験(A4で10枚程度)を行うというプログラムでした。座学、実践、リーガエスパニョーラ、U18での公式戦分析、最後のアウトプット試験とPDCAサイクルがしっかりと体現されていて、自分の血となり、肉となっていったのを鮮明に記憶しています。

攻撃に関してはこのような基本戦術が約17本、守備は約14本程度あり、これらを小学生までにトレーニング、年間リーグ戦(38試合のホーム&アウェイ)・トーナメントのカップ戦を通して、監督・コーチ・選手達が一体となって、勝利を目指しながら、実戦で習得しています。

2回の講習参加時には、やはりスペインの底力を感じました。もちろん一昨年のワールドカップでは日本はスペインに勝利して、スペイン代表も2010年以来ワールドカップは獲っていないのと、ポゼッションサッカーの終焉だと最近では言われていますが、5年ぶりに2023年にマドリッドを訪問した際には、スペインサッカーも日々アップデートされており、最近では縦に速いサッカーをより志向するチームも増えてきました。

それでも、サッカーマニアの私からするとスペインサッカーを学べば学ぶほど、よりサッカーを理解して、サッカーを好きになっているので、継続してリーガエスパニョーラやスペインサッカーを観たり、勉強したりしています。

次回は、また攻撃編の続編を行いたいと思います。

本日もベルビュースポーツアカデミー/ベルビューフットボールクラブ府中(BFC府中)のホームページにご訪問頂き、ありがとうございました。

Gracias por visitar la página de inicio de Bellevue Sports Academy/Bellevue Football Club Fuchu (BFC Fuchu) hoy.

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この記事を書いた人

志村コーチのアバター 志村コーチ 代表理事・監督

フットボール歴40年。現在は日本にてクラブチーム・中学校のコーチをしながら、レアルマドリッド大学院にてフットボールを研究中。直近の目標はスペイン・アジアの最上位ライセンス(UEFA Pro・AFC Diploma Pro)を取得し、スペインで監督をすること。最終目標は、スペイン戦術・スペイン語を標準装備した各拠点のBFC選手達がラ・リーガの選手として活躍すること。まだまだ時間が掛かりそうですが、皆様のご支援・ご協力の程、よろしくお願い致します。

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